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連載コラム


外食業に初めて開く育成就労の道|ただし2年で5,300人の枠

外食業に初めて開く育成就労の道|ただし2年で5,300人の枠

2026.09.23

前回は、9月30日という目安の期限をお伝えしました。今回は少し引いて、そもそも育成就労が飲食業にとってなぜ大きなニュースなのかをお伝えします。

結論を先に3つ書きます。

  • これまで街の飲食店は、海外から人を呼んで「育てながら雇う」ことができませんでした。育成就労で、初めてそれができるようになります。

  • 国が外国人で確保しようとしている人数は5万5,300人。その大半を占める特定技能の枠はすでに埋まり、今は育成就労の5,300人が残っているだけです。

  • 業態によっては、そもそも受け入れられないお店もあります。

これまで、飲食店には道がなかった

まず、過去の話から。

一般の飲食店は、技能実習生を受け入れることができませんでした。厚生労働省が出している技能実習の対象職種の一覧に、「外食業」という職種がなかったからです。

病院や福祉施設の給食を作る仕事は対象に入っていました。ですが、街の居酒屋やレストランは対象外でした。

では、これまで飲食店はどうやって外国人を雇っていたか。実際には、次の2つしかありませんでした。

これまでの選択肢

中身

難しさ

特定技能1号

試験に受かった人を、即戦力として採る

試験に受かった人しか採れない

留学生などのアルバイト

学校に通う人が空いた時間に働く

週28時間までという制限がある

「未経験でも、うちで3年かけて育てる」という選び方ができなかったわけです。

育成就労では、外食業が対象に入りました。仕事の区分は「外食業」と「医療・福祉施設給食製造」の2つです。「外食業」の中身は、飲食物調理・接客・店舗管理です。

飲食業にとってこれは、制度が入れ替わるという話ではありません。今までなかった採用の道が、1本増えるという話です。

枠は「ちょうど足りる」設計になっている

ここで、国が想定している数字を見ておきます。

2026年1月23日に国が決めた外食業のルールには、令和10年度の見通しが順を追って書かれています。

段階

人数

令和10年度に必要な就業者数

481万1,000人

実際に見込まれる就業者数

455万5,000人

差し引き、足りない人数

25万6,000人

生産性向上と国内人材の確保でまかなう分

20万700人

外国人で確保する必要がある人数

5万5,300人

そして、この5万5,300人の中身が、次の2つに分かれています。

制度

人数

期間

特定技能1号

5万人

令和6年度からの5年間

育成就労

5,300人

令和9年度からの2年間

5万人+5,300人=5万5,300人。つまり枠は、外国人で確保したい人数をちょうど埋める設計になっています。足りない人数に対して枠が極端に少ない、という話ではありません。

問題は、その内訳です。

大きいほうの枠は、すでに止まっています

5万5,300人のうち、大半を占めるのは特定技能1号の5万人です。ところが、この枠はすでに埋まりました。

外食業の特定技能1号は上限が5万人でしたが、その数に届きそうになったため、国は2026年4月13日から新しい受け入れの手続きを一時的に停止しました。試験そのものも、当分のあいだ行われていません(農林水産省)。

つまり今、外国人を新しく受け入れる道として現実的に残っているのは、育成就労の5,300人のほうだけ、という状況です。

同じ仕組みは、育成就労にもあります。人数が上限を超えそうになれば、育成就労の申請も止められる建て付けです。上限があり、達すれば止まる。特定技能で実際に起きたことは、育成就労でも起こり得ます。

なお、人手不足の深刻さも同じ資料に数字で出ています。令和6年度の外食業の有効求人倍率は4.15倍。全業種の平均が1.25倍ですから、およそ3倍の厳しさです。日本銀行の調査でも、「宿泊・飲食サービス」の人手不足感は、全業種の中でいちばん強い状態が続いています。

枠が限られていて、しかも一度埋まれば止まる。準備は早いほど有利です。

受け入れられない業態もあります

もうひとつ、事前に確認しておきたいことがあります。

外食業には、業態による線引きがあります。国のルールに、受け入れる会社が守ることとしてはっきり書かれています。

  • 風営法の許可が必要なお店(キャバクラ、スナックなど)では働かせないこと。ただし旅館・ホテルの許可を取って旅館業を営んでいる場合は例外

  • 性風俗関連のお店では働かせないこと

  • 「接待」をさせないこと

  • 業界の協議会や、農林水産省の調査に協力すること

「接待」が具体的に何を指すかは、警察庁の通達で示されています。

ここは、飲食業では現実的な問題になります。同じ会社の中に、居酒屋とスナック、深夜のバーを持っているケースは珍しくありません。

このとき、判断は会社単位ではなくどのお店に配属するかで決まります。「今日は人が足りないから、あっちの店を手伝って」という応援シフトが、そのままルール違反になり得ます。店長クラスまで、必ず共有しておいてください。

もうひとつ。お店と切り離された独立したセントラルキッチンは、外食業ではなく「飲食料品製造業」という別の区分になります。自社の事業所ごとに、どちらに当たるかを確認しておいてください。

派遣では受け入れられません

もう1点、押さえておきたいルールがあります。

育成就労の外国人は、自社で直接雇う形でしか受け入れられません。人材派遣や請負では受け入れられません。特定技能1号も同じです。

グループ会社の間で出向させている場合や、フランチャイズで本部と加盟店のどちらが雇い主か曖昧になっている場合は、先に整理が必要です。

「うちには回ってこない」と思った方へ

ここまで読んで、「5,300人ならうちには縁がない」と感じた方も多いと思います。その感覚は、間違っていません。

ただ、2027年4月1日には、育成就労とは別のことも起こります。同じ法律の改正で、外国人の雇い方を間違えたときの罰が重くなります。

留学生のアルバイトが1人でもいるお店は、こちらに関係します。次回は、そのために今すぐお店でできる点検をお伝えします。

まとめ

育成就労は、「技能実習の名前が変わっただけ」の制度ではありません。これまで飲食店に開かれていなかった、育てながら雇う道が、人数の上限つきで初めて開くという話です。

一方で、枠は2年で5,300人。大きいほうの特定技能の枠はすでに止まっています。業態による線引きもあり、派遣では受け入れられません。まずは自社が対象になるお店なのかどうか、そこから確認してみてください。

次回は、いま特定技能の外食業で起きていること、そして今いる外国人スタッフを守るためにお店で何を確認すればよいかをお伝えします。

参考にした情報源