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連載コラム


自己都合と会社都合の違い|雇用終了4類型の整理

自己都合と会社都合の違い|雇用終了4類型の整理

2026.08.26

飲食店の現場では、従業員の入れ替わりが日常的に起こります。しかし「辞める」という一つの出来事が、法律上は4つの異なる手続に分かれることは、あまり知られていません。この記事では、自主退職・合意退職・雇止め・解雇の4類型を、意思表示をするのは誰か、成立に何が必要か、という観点で整理します。あわせて、離職票の「自己都合」「会社都合」がこの4類型とどう対応するのかを説明します。読み終えたとき、雇用の終わりについて何を事前に決めておけばよいかが見えるはずです。

この記事の要点

  • 雇用の終わり方は「自主退職」「合意退職」「雇止め」「解雇」の4つに分かれ、それぞれ成立の要件と根拠条文が異なります

  • 「自己都合」「会社都合」は労働基準法の言葉ではなく、雇用保険の給付を決めるための区分です

  • 退職勧奨は解雇ではありません。ただし勧奨の方法によっては違法と判断された事案があります

  • 離職票の離職理由は、会社が一方的に確定できるものではありません。従業員が異議を申し立てる欄があります

  • 2025年4月1日から、自己都合離職の給付制限期間は原則1か月に短縮されました(厚生労働省)

雇用の終わり方は4つに分かれる

雇用契約の終了は、誰が終了の意思表示をしたかによって、自主退職・合意退職・雇止め・解雇の4類型に分かれます。この区別を最初に押さえておけば、その後の手続は整理して考えられます。

現場では、これらはまとめて「辞めた」と呼ばれています。しかし法律上の扱いは大きく異なります。必要な手続も、無効になる条件も、それぞれ別です。

まず、それぞれの言葉を定義します。

自主退職とは、従業員が一方的な意思表示によって雇用契約を終了させることです。民法第627条により、期間の定めのない雇用契約では、従業員は原則としていつでも解約を申し入れられます。申入れから2週間が経過すると、契約は終了します。

合意退職とは、会社と従業員の双方が合意して雇用契約を終了させることです。会社からの申入れに従業員が応じる場合も、その逆も含みます。

雇止めとは、有期雇用契約について、契約期間の満了時に会社が更新しないことです。契約は期間満了で終わるため、解雇とは異なる手続になります。

解雇とは、会社が一方的な意思表示によって雇用契約を終了させることです。労働契約法第16条により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利の濫用として無効になります。

4類型を比較する

4類型は、意思表示の主体・成立要件・根拠条文・実務上の注意点で整理できます。下表が全体像です。

類型

意思表示の主体

成立要件

主な根拠条文

実務上の注意点

自主退職

従業員

従業員の一方的な意思表示。期間の定めのない契約では申入れから2週間で終了

民法第627条

口頭のみだと後日「言った・言わない」になりやすい。書面で受理する

合意退職

会社と従業員の双方

双方の合意。会社からの申入れ(退職勧奨)に従業員が応じた場合を含む

直接の規定なし(契約自由の原則)

合意した内容を書面化する。強い圧力があった場合、合意の有効性が争われることがある

雇止め

会社

有期契約の期間満了。ただし労働契約法第19条の要件に該当する場合は、更新拒絶に客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要

労働契約法第19条

更新を繰り返している場合、期間満了だけでは終了できないことがある

解雇

会社

客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性。30日前の予告、または解雇予告手当の支払い

労働契約法第16条、労働基準法第20条

要件を満たさない解雇は無効。予告手当の支払いは有効性とは別の問題

この4類型のうち、実務で判断を誤りやすいのは合意退職と雇止めです。どちらも「話し合いで終わった」「契約が満了しただけ」と見えるため、必要な手続が省略されやすいのです。

「自己都合」「会社都合」は雇用保険の区分です

自己都合・会社都合という区分は、労働基準法の用語ではありません。雇用保険の基本手当をいつから、どれだけの期間受け取れるかを決めるための区分です。

離職票には離職理由を記入する欄があります。ハローワークはこの記載をもとに、離職者を特定受給資格者・特定理由離職者・一般の受給資格者などに分類します。分類によって、給付日数と給付開始時期が変わります。

自己都合離職の給付制限期間は、2025年4月1日から見直されました。従来は7日間の待期期間に加えて原則2か月の給付制限がありましたが、2025年4月1日以降の離職では原則1か月に短縮されています。ただし、退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を受けている場合は3か月です。また、離職日前1年以内に修了した教育訓練、または離職日以後に受けている教育訓練(いずれも2025年4月1日以降に受講を開始したものに限る)がある場合は、給付制限が解除されます(厚生労働省)。

会社側から見ると、離職理由の区分は雇用関係助成金の受給要件にも関わります。事業主都合の離職があると、一部の助成金が一定期間受けられなくなる場合があります。

ここで注意したいのは、離職理由を実態と異なる形で記載しないことです。従業員の希望に配慮して「会社都合にしてほしい」という依頼に応じたり、逆に助成金への影響を避けるために事業主都合を自己都合として届け出たりすることは、いずれも適切ではありません。離職理由は、実際に起きた事実に沿って記載します。

退職勧奨は解雇ではありません

退職勧奨とは、会社が従業員に退職を勧め、合意による退職を求める行為です。解雇とは異なり、従業員には応じる義務がありません。断ることもできます。

退職勧奨そのものは違法ではありません。会社が従業員に退職を打診すること自体は、通常の労務管理の範囲です。合意に至れば合意退職となり、解雇の要件は問題になりません。

ただし、勧奨の方法には限度があります。退職勧奨の違法性が争われた下関商業高校事件(最高裁第一小法廷 昭和55年7月10日判決)では、従業員が退職に応じない意思を表明した後も、短期間に多数回、しかも長時間にわたって執拗に勧奨を続けたことなどが違法と判断されました。

この判決から読み取れる実務上の目安は、次のとおりです。

  • 従業員が明確に断った後は、繰り返し勧奨を続けない

  • 1回あたりの面談時間が長時間に及ばないようにする

  • 退職しないことを理由に不利益な取扱いをしない

  • 面談の日時・出席者・内容を記録に残す

面談の記録は、会社を守るためだけのものではありません。従業員にとっても、どのような説明を受けたかを確認できる材料になります。双方が同じ記録を持っていることが、後の紛争を防ぐ最も確実な方法です。

有期契約の雇止めは「更新しない」だけでは済まないことがあります

有期雇用契約の雇止めは、契約期間の満了で自動的に終了するとは限りません。労働契約法第19条に該当する場合、更新拒絶には解雇と同様の合理性が求められます。

労働契約法第19条は、2つの場合を定めています。1つは、有期契約が反復更新され、期間の定めのない契約と実質的に同視できる場合です。もう1つは、従業員が契約の更新を期待することに合理的な理由がある場合です。

飲食店では、アルバイトやパートタイマーと有期契約を結び、更新を繰り返すことが多くあります。更新の回数が重なり、更新手続が形式的になっているほど、第19条に該当する可能性は高まります。

雇止めの予告についても定めがあります。「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号、厚生労働省)では、有期契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続勤務している従業員について、契約を更新しない場合は少なくとも30日前までに予告することとされています。

雇止めで揉める原因の多くは、更新時の説明にあります。更新の判断基準を契約書に書いていない、更新の可否を口頭で伝えている、契約書を交わさないまま働いてもらっている、といった状態です。この点は、次回扱う労働条件通知書の話とも直結します。

離職票の離職理由は会社が一方的に決めるものではありません

離職票の離職理由には、従業員が異議を申し立てる欄があります。会社が記載した内容がそのまま確定するわけではありません。

離職証明書は、事業主がハローワークに提出する書類です。ここには、事業主が記載した離職理由に対して、離職者が異議の有無を選択する欄があります。異議ありとされた場合、ハローワークが双方から事情を確認し、離職理由を判断します。

このため、離職理由を実態と異なる形で記載したとしても、後から覆る可能性があります。むしろ、記載内容を退職前に本人と共有しておくほうが、手続はスムーズに進みます。

あわせて押さえておきたいのが、労働基準法第22条です。従業員が請求した場合、会社は退職の事由を記載した証明書を遅滞なく交付しなければなりません。解雇の場合は、その理由も含みます。請求があってから理由を整理し始めると、説明が後付けに見えてしまいます。

揉めないために、事前に整えておくこと

雇用終了をめぐる紛争の多くは、終了の場面ではなく、それ以前の書類と記録の不足から生まれます。事前に整えられる項目は、それほど多くありません。

飲食店の実務で優先度が高い順に挙げます。

1. 労働条件通知書を全員に交付する

有期契約であれば、契約期間、更新の有無、更新の判断基準を明記します。書き方の個別の判断については、労務相談でも対応しています。更新の判断基準が書かれていれば、雇止めの場面で説明の根拠になります。従業員にとっても、何が求められているかが事前にわかります。

2. 就業規則に退職・解雇の事由を定める

常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則の作成と届出が労働基準法第89条により義務づけられています。退職に関する事項(解雇の事由を含む)は、必ず記載しなければならない事項です。

3. 面談と指導の記録を残す

勤務態度や能力を理由に雇用終了を検討する場合、それまでにどのような指導を行ったかが判断材料になります。指導の記録がないまま終了に進むと、改善の機会を与えたかどうかを説明できません。

4. 離職理由の区分を事前に確認する

雇用終了の形が決まった段階で、離職票にどう記載するかを社会保険労務士やハローワークに確認します。手続の直前に判断すると、実態と異なる記載につながりやすくなります。

これらはいずれも、雇用終了の場面で急に用意できるものではありません。平常時に整えておくことで、いざというときに会社も従業員も、余計な負担を負わずに済みます。

よくある質問

自己都合と会社都合は誰が決めるのですか?

離職理由は、会社が離職証明書に記載し、ハローワークが最終的に判断します。離職証明書には離職者本人が異議を申し立てる欄があり、異議があった場合はハローワークが双方から事情を確認します。会社が一方的に確定できるものではありません。

退職勧奨を断られたらどうなりますか?

退職勧奨に応じる義務は従業員にありません。断られた場合、雇用契約はそのまま継続します。断られた後も繰り返し勧奨を続けると、違法と判断された事案があります。断られた時点で勧奨はいったん終了し、別の方法を検討することになります。

契約期間が満了したら、会社は自由に更新を断れますか?

契約期間の満了だけで当然に終了するとは限りません。労働契約法第19条は、契約が反復更新されている場合や、更新への合理的な期待がある場合について、更新拒絶に客観的合理的理由と社会通念上の相当性を求めています。更新の判断基準を契約時に明示しておくことが重要です。

解雇予告手当を払えば解雇できますか?

解雇予告手当は労働基準法第20条の手続要件であり、解雇の有効性とは別の問題です。手当を支払っても、労働契約法第16条の要件を満たさない解雇は無効になります。手続と有効性は分けて考える必要があります。

従業員から「会社都合にしてほしい」と頼まれたらどうすればよいですか?

離職理由は実際に起きた事実に沿って記載します。実態と異なる記載は、雇用保険の給付や助成金の受給に影響するため適切ではありません。従業員が納得できない場合は、離職証明書の異議欄を通じてハローワークに申し立てる仕組みがあることを伝えます。

自己都合で退職した従業員は、いつから失業給付を受け取れますか?

2025年4月1日以降の自己都合離職では、7日間の待期期間に加え、原則1か月の給付制限期間が経過した後に受給が始まります。ただし、退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を受けている場合は3か月です。所定の教育訓練を受けた場合は給付制限が解除されます(厚生労働省)。

参考・出典

ご相談について

社会保険労務士法人CSSは、飲食業・サービス業の労務管理を専門としています。雇用終了の手続や労働条件通知書の整備については労務相談で、離職票をはじめとする届出は社会保険手続代行で対応しています。判断に迷う場面が出てきた段階で、お問い合わせからお気軽にお声がけください。