06-6829-6432
平日:9時〜17時

大阪市の社会保険労務士法人
人事労務の様々な問題を解決いたします

人事労務豆知識

給与計算

給与計算は、「勤怠項目」→「支給項目」→「控除項目」の順番で計算をしていき、総支給額から総控除額を引いて、差引支給金額を算出するという手順で行います。

勤怠項目

現行の労働法の規定から言えば、給与はあくまで時間に対して支払われるものとなっています。

「何日働いた」「何時間働いた」ことの対償として給与が支払われる。逆に言えば、「働かなかった時間に対しては給与を支払わない」=ノーワーク・ノーペイが原則です。

そのため、給与計算は働いた時間を把握すること、即ち勤怠項目からスタートします。

所定労働日数確認

給与計算期間中の労働することが義務付けられている日数=所定労働日数が、給与計算を進めていくうえでのベースとなりますので、最初に確認します。

休日出勤日数の集計

本来労働が免除されている日=休日に出勤した日を集計し、その日は休みで対応するのか、割増賃金で対応するのかについて確認します。

年次有給休暇のチェック

労働基準法の定めによると、有休は入社後6ヶ月に付与されます。そのため、中途入社の方に有休が付与される月はバラバラです(例えば毎年4月とか、一斉に有休を付与するように就業規則を定めることも可能です)。

各人ごとに、いつ付与されていつ取得したのか、残日数は何日あるのかをチェックして、無給の日が発生するのかしないのかを把握します。

振替休日・代休のチェック

休日に出勤するとき、事前に日を指定し振り替えて休む場合を「振替休日」といいます。この場合、休日が出勤日となり、出勤日が休日となるので、休日出勤は生じていないと解釈されます。

休日に出勤して、代わりに他の日に休む場合を「代休」といいます。この場合、代わりに休みを取ったとしても、休日出勤は発生したと解釈されます。

このように振替休日と代休とでは法的な意味が異なり、割増賃金の支払い金額に違いが生じることがありますので、注意が必要です。

その他休暇のチェック

法律で定められている休暇(生理休暇、産前産後休暇、育児休業、介護休業、看護休暇など)、その会社独自の制度としての休暇(慶弔休暇、夏季休暇など)休暇の種類は様々ありますが、法律で有給と定められている休暇は年次有給休暇しかありません。

会社の規定でその休暇が有給なのか、無給なのかを確認の上、無給の日が発生するのかしないのかを把握します。

欠勤等無給日数の集計

上記休暇の扱いを含め、当該給与計算期間において無給の日数を集計します。

所定労働時間の確認

通常、所定労働日数×1日当たりの所定労働時間です。こちらも計算のベースとなりますので、最初に確認します。

時間外勤務時間の集計

割増賃金の対象となる時間を集計します。
日々の集計においては15分単位や30分単位等きりのいい時間で区切ってしまってはいけません。1分単位で集計する必要があります。
ただし、1ヶ月当たりの総時間の集計に際して、30分未満は1時間単位に切り捨てとして、30分以上は1時間単位に切り上げとして行うのは問題ありません。
これは他の時間の集計も同様です。

深夜勤務時間の集計

22:00〜5:00の労働時間については、割り増しをつけなければならないので、別途集計します。
午前0時をまたいで継続して働いている場合は、原則前日の労働が続いているものとしてカウントします。
もしずっと続けて働いて、翌日の始業時刻を経過した場合には、その始業時刻までが前日の労働時間となります。

また、深夜勤務時間を集計する上で、深夜のみとして集計するのか、深夜+時間外として集計するのか、割増賃金の計算上明確な区別が必要になります。

上記の日をまたいで翌朝9時まで働いた例でいえば、以下のどちらなのかということです。
・時間外勤務8時間、深夜(+時間外)勤務7時間
・時間外勤務15時間、深夜勤務7時間

休日勤務時間の集計

休日出勤が発生したとき、振替休日や代休といった休みとして消化するのか、休日出勤手当等といった賃金として消化するのかを明確にして、賃金として消化する時間数を集計します。

遅刻・早退時間の集計

ノーワーク・ノーペイの原則に則り、遅刻早退時間を賃金から控除するというルールを適用する場合、その時間数を集計します。
電車遅延により遅刻した場合、「遅延証明書」を持参して遅刻した時間分を証明できるなら遅刻控除を行わない、というルールを定めていることが多く見受けられます。その場合、証明書のチェックもご担当者に必要な作業となります。

支給項目

支給項目に関する計算処理の流れは、「固定的給与の集計」→「変動的給与の集計」→「不就労分の控除額集計」→「課税・非課税項目別集計」→「総支給額集計」となります。

給与体系は企業により様々ですが、ここでは一般的に使用される給与体系を基に解説します。

固定的給与の集計

原則的に毎月は変動しない給与を、固定的給与と呼びます。上記を例にとると、基本給と固定的諸手当のようなものが該当します。
基本給については改定時・入社時・退職時など、諸手当については支給開始・停止・増額・減額があった時など、変動があったときに漏らさないように反映します。

 

変動的給与の集計

主として割増賃金が該当します。
割増賃金の算出方法は、「時間単価 × 割増率 × 割増に該当する労働時間」です。
なお、時間単価の計算には、以下のものを除いて全ての給与を参入しなければなりません。

・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、家族の人数や通勤にかかる費用、家賃の金額等に応じてではなく、一律に支給されるような家族手当・通勤手当・住宅手当は、単価の計算に含めなければなりません。

不就労分の給与額集計

遅刻早退や欠勤、無給扱いの休暇や休業について、控除をするルールになっている場合、控除額は一般的に以下のような方法により算出します。

欠勤等控除額=対象となる給与の総額/1ヶ月当たりの所定労働日数×欠勤等日数

遅刻早退等控除額=対象となる給与の総額/1ヶ月当たりの所定労働時間数×遅刻早退等時間

課税・非課税項目別集計

所得税の計算をするために、支給項目のうち課税項目と非課税項目に分けて集計します。

非課税扱いとなる代表的なものは「通勤手当」です。
交通機関を利用して通勤する人に、通勤手当や通勤定期券を支給する場合、1ヶ月当たりの合理的な運賃の額であれば非課税となります(上限は100,000円)。
なお、自転車や自動車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当の場合、通勤距離によって4,100〜24,500円を限度として非課税扱いになります。

※片道2㎞未満の場合は、全額課税されます。

控除項目

控除項目に関する計算処理の流れは、「社会保険料算出」→「源泉所得税算出」→「その他の控除額集計」→「総控除額集計」→「差引給与額算出」です。

社会保険料の算出

給与から控除する社会保険料は、
・健康保険料
・介護保険料
・厚生年金保険料
・雇用保険料
の4つです。

健康保険料、介護保険料および厚生年金保険料は、標準報酬月額に対して保険料率を乗じて算出します。

雇用保険料は、総支給額に雇用保険料率を乗じて算出します。
この総支給額には、所得税が非課税である通勤手当の金額も含めます。

源泉所得税額算出

まず、支給額のうち課税対象額から社会保険料を控除して、「社会保険料控除後の給与」を算出します。

この「社会保険料控除後の給与」と、給与所得者の扶養控除申告書により本人から申告してもらった「扶養親族の人数」を、給与所得の源泉徴収税額表にあてはめ、源泉所得税額を算出します。

なお、「電子計算機等を使用して源泉徴収税額を計算する方法を定める財務省告示」により、計算式により源泉所得税額を算出する方法もあります。

その他の控除額算出

会社が市町村より徴収義務者として指定されることにより、住民税を給与から天引きして納付することができます(特別徴収)。

住民税の納付額は、前年中の給与について会社が提出する「給与支払報告書」をもとに市町村が税額を算出し、会社に特別徴収税額通知書が送ってきますので、この通知書のとおりの住民税額を給与から控除して納付します(期間は6月から翌年5月まで)。

他に、積立金や貸付金の返済、社宅料などを給与から天引きすることはよくあることですが、こういった税金や社会保険料のような法定以外のものを控除するためには、あらかじめ労使協定書を締結する必要があります。

総控除額集計及び差引支給額算出

上記控除項目すべて、総控除額を集計し、総支給額より差し引くことにより支払金額(差引支給額)を算出します。