特定技能「外食業」の受入れが止まる。4月13日以降、あなたの店はどうする?
2026.03.30

飲食店の経営者に、率直に問いたい。
「人手不足の解消策として、特定技能の外国人に頼りすぎていないか?」
令和8年3月27日、農林水産省と出入国在留管理庁は、外食業分野の特定技能1号について、2026年4月13日以降の運用方針を発表した。2026年2月末時点で、外食業で特定技能1号として働く外国人は約4万6千人(速報値)。
このペースが続けば2026年5月頃には受入れの上限である5万人を超える見込みであり、法律の規定に基づいて新規受入れの一時停止措置がとられることになった。
これは単なる制度ニュースではない。外食業界全体の人材戦略の核心を問われている出来事だ。
5万人という上限の意味
特定技能1号には、分野ごとに「これ以上は受け入れない」という上限人数が設定されている。外食業分野では、それが5万人だ。

この数字には根拠がある。政府の試算によれば、2028年度に外食業で必要な働き手は約481万人と見込まれる一方、就業者数の見込みはそれを下回る。
飲食店のデジタル化や省力化、国内での採用強化などあらゆる努力を積み上げても、なお約5万5,300人分の人手が足りないとされた。この「どうしても埋まらない部分」を外国人材で補う——それが特定技能1号の設計思想だった。
つまり、5万人という枠はもともと「最大限の国内努力をしてもなお足りない分」を補うために設けられたものだ。その枠に、想定よりずっと早く到達してしまった。
何が止まり、何が止まらないのか——正確に理解する
「外国人が外食業で働けなくなる」と受け取った方もいるかもしれない。しかし実態は異なる。整理しておきたい。
止まるのは、新しく人を呼び込むための手続きだ。

海外から新たに特定技能1号として呼び寄せるための書類(在留資格認定証明書)は、4月13日以降に受け付けた申請について発行されなくなる。また、国内で留学などの別の在留資格から特定技能1号に切り替えようとする申請も、原則として認められなくなる。
ただし、すべてが止まるわけではない。以下には例外がある。
すでに外食業の特定技能1号として日本に在留している人が転職する場合の手続きは、引き続き通常どおり受け付けられる。また、一定の要件を満たす技能実習の修了者や、すでに移行準備の許可を受けている人については、審査の上で認められる可能性がある。
さらに、今すでに働いているスタッフの在留期間更新については止まらない。これは通常どおり審査される。
一言でまとめるなら、「新しく人を入れるルートが大きく細る」というのが正確な理解だ。「何もかもが止まる」でも「大勢に影響はない」でもない。
なお、4月13日より前に手続きを済ませた案件についても、処理の順番の関係で書類の発行まで相当な時間がかかる見込みだ。この点も頭に入れておいてほしい。
特定技能2号は、代替策ではなく育成戦略だ
「2号に切り替えればいいのでは」——そういう声をよく聞くようになった。だが、ここで制度の本質を見誤ることは避けなければならない。
特定技能2号になると、日本に在留できる期間の上限がなくなり、事実上ずっと働き続けることができる。家族を日本に呼び寄せることも可能になる。そこは確かに大きなメリットだ。
しかし外食業の2号を取得するには、三つの高いハードルをすべて越える必要がある。
一つ目は、外食業の2号専用試験(実施機関:一般社団法人外国人食品産業技能評価機構、略称OTAFF)への合格。
二つ目は、日本語能力試験N3以上の取得。日本語の試験については、他業種の2号には課されていない外食業特有の要件だ。日常会話レベルを超えた、ある程度のビジネス日本語力が求められる。
三つ目は、食品衛生法の営業許可を受けた飲食店で、副店長やサブマネージャーなど店をまとめる立場として複数のスタッフを指導・監督しながら2年間実際に働いた経験だ。

この三つを見れば、2号が「今月足りない人手をすぐに補う制度」ではないことは明らかだ。数年単位で計画的に育てることが前提の仕組みだ。
2025年末時点で特定技能2号の在留者は全分野合わせて約7,955人まで増えており、急増傾向にあるのは事実だ。しかし規模としては、外食1号が担ってきた人手をすぐに代替できるほどの数字ではない。
2号は希望だが、即効薬ではない。そこを正確に理解した上で、今から計画的に育成を始めることが問われている。
本当の問題は「新規採用」より「定着競争」にある
氷山の一角だ。本当の問題は、その先にある。
新しい人材を呼び込むルートが細る中、もう一つの現実が浮かび上がる。今まさに自店で働いている特定技能1号のスタッフは、外食業の同じ分野内であれば、本人の意志で別の店に転職することができる。これは制度上、本人に保障された権利だ。待遇が良い店、働きやすい職場があれば、そちらに移っていく。その流れを外側から止める手段は、経営者にはない。

新しく採用できない今、採用競争の主戦場は「今いる人材に留まってもらえるか」に移りつつある。そして、この問いは外国人スタッフだけの話ではない。
外食・宿泊業の離職率の高さは、日本の産業の中でも際立っている。厚生労働省の2025年上半期の調査によれば、宿泊業・飲食サービス業の離職率は10.3%で、全産業平均の6.5%を大きく上回る。毎年50万人を超える人材がこの業界から離れていく計算だ。
一方で、市場には明るい面もある。日本フードサービス協会の2025年の調査では、外食全体の売上は前年比107.3%と好調だ。インバウンド(訪日外国人観光客)の旺盛な需要や、大阪・関西万博の効果もあり、客単価は104.3%と上昇が続いている。
しかし逆風も吹いている。消費者の節約志向が強まり、客数には頭打ち感がある。帝国データバンクによれば、2025年の飲食店の倒産件数は約900件と過去最多を記録した。人件費の上昇も続き、「売上は伸びているのに手元に残らない」という構造に苦しむ店は少なくない。
売上の追い風と、人材・コストの逆風が同時に吹いている。この局面で、外国人採用に頼るルートまで細るとはどういうことか。
今、飲食店が本気で取り組むべきこと
「外国人が採れなくなった。どうすればいいか」
こうしたご相談が増えている。私の答えは一貫している。
日本人が「ここで働き続けたい」と思える職場をつくること。今がその本気の取り組みを始めるタイミングだ。
参照したいのが、ハーズバーグの二要因理論(Frederick Herzberg)だ。職場で人が「辞めない」「頑張る」かどうかは、二種類の要因で決まるとされている。

一つは「不満をなくす要因」だ。適切な休暇やシフトの設計、安定した給与、労働基準法の遵守、安全に働ける環境——これらが欠けていると、人はすぐに辞めていく。
もう一つは「やりがいを生む要因」だ。成長できる機会、自分の役割が明確になっていること、頑張りが正当に評価される仕組み、アルバイトから正社員への登用の道——これがなければ、「長く働き続けたい」とは思えない。
この二つを同時に整えることが、人が定着する職場の条件だ。どちらか片方だけでは足りない。労働基準法を守れていない職場は論外として、守っているだけでも「働き続けたい店」にはなれない。
さらに重要なのは、この取り組みが業績に直結するという点だ。スタッフが職場に満足すれば、接客の質が上がる。接客の質が上がれば、お客様の満足度が高まる。お客様の満足度が高まれば、リピートが増え、売上と利益が安定する。
この連鎖は「サービス・プロフィット・チェーン」として経営学でも実証されてきた考え方だ。スタッフを大切にすることが、最終的に業績につながる。これは理想論ではなく、私がクライアントデータをもとに仮説と検証を繰り返してきた中での実感だ。
そして、この取り組みは外国人スタッフにとっても同様に効く。日本人のために整えた職場環境は、外国人スタッフが「ここで長く働きたい」と思う土台にもなる。
「なんとなく取り組む」から卒業する
取り組みを「感覚」で評価していては、改善は再現できない。仮説と検証のサイクルで回すには、定期的に数字で確認することが欠かせない。私が推奨するのは以下の指標だ。

特に注目してほしいのが、知人・友人の紹介からの採用率だ。「この店で働いてよかった。友達にも勧めたい」と思うスタッフが増えているなら、それは職場の質が本物の意味で良くなっているサインだ。採用コストが下がるだけでなく、紹介で入ってきた人材は定着率も高い傾向にある。
逆に、離職率が高止まりし、スタッフからの紹介がまったくないような職場では、採用にいくらお金をかけても、入口から水が漏れ続ける構造は変わらない。
今すぐ確認してほしいこと
自店の現状を、以下の視点から点検してほしい。
今いる特定技能1号のスタッフの在留期間の期限と更新時期を把握しているか
4月13日以降に予定していた外国人の新規採用計画を見直しているか
残業代の支払い、休日の取得、36協定など、労働基準法の基本項目に問題はないか
スタッフと定期的に個別で話す機会(面談)を設けているか
アルバイトから正社員になれる基準やルールが明文化されているか
どのルートで採用したかを記録し、紹介からの採用があるかどうかを把握しているか
今在籍している特定技能1号のスタッフと、2号への移行について話し合っているか
「外国人が採れなくなった」という直感は、正しいと思う。だが、それを人材危機の終わりと捉えるか、採用力と定着力を本気で鍛え直す転換点と捉えるかで、3年後の店舗の姿は大きく変わる。
外食業界には今、売上の追い風が吹いている。しかし、人材の基盤が脆いままでは、その追い風を利益に変えることができない。
職場の魅力が競争力になる段階に、この業界は入った。
あなたの店は、スタッフが「ここで働き続けたい」と思える場所になっているか。


